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−第2部−「ゆうれい犬さんのお願い」 第4回
約束破り
お母ちゃんと二人で駆けつけると、妹たちがこの間と同じ部屋の前で唸っていた。
相変わらず怖がりのクロちゃんは、まるでマッサージ機のように、グイングインと身体を揺すっている。
おとなしいチコちゃんは、ドアの隙間からお鼻を「ヒクヒクヒク」。
いつもとぼけているロクちゃんはお庭へ回り、なんでも興味のあるコロちゃんは、ドアを「ガリガリガリ」。
「こらぁー、ドアがキズだらけになっちゃうでしょ!! あったくぅ〜」
お母ちゃんが、目くじらを立てて怒る。
ところがコロちゃんが、このおっかないお母ちゃんに怒られても、「ウ〜、ワンワンワンワン、ウ〜、ウ〜、ワンワンワンワン(ここに怪しいやつがいる、ポーちゃん危険だからあっちに行ってて)」とドアに突進!
そのとたん、「ドタドタドォーン」。
なんと、お母ちゃんが同時にドアを開けてしまったから、さぁー大変。コロちゃんは思いっきり部屋の中へ突っ込んでしまい、くるくる回転してから、何かの上に尻もちをついた。
「あら大変、だ、だ、大丈夫? つぶされなかった?」
なんとコロちゃんのお尻の下に、ゆうれい犬さんが敷かれていた。しかも、顔を真っ赤にして照れている。
「何ニヤニヤしてんのよ!! ゆうれいのくせに」
「あっ、いや、その〜、すみません」
ショボン。
まっ、ゆうれい犬さんも男の子だから仕方ないか。年頃の女の子のお尻に敷かれて、周りから見つめられているんだから。
「ところで、コロちゃんたちにも、このゆうれい犬さんが見えるの?」
妹4人は、「うん、見えるよ、はっきりと。カッコイイわんこだよねー」、「耳の形といい、鼻筋の通りといい、キリッとした目といい、私たちの理想のオス犬だよね〜」などと、目を輝かせて言う。
「あのー、私チコちゃん。3歳。趣味はボール遊びとお唄、貴方は?」と、さっそく自分をアピールしている。
仕方ない。妹たちは女盛り。今までオス犬とはあまり縁がなかったから、人間で言えばキムタクのようなカッコイイマスクに、ドキッとしてしまったのだ。
ふと見ると、床の間の上に、行方不明だったパグの小次郎ちゃんが、チョコンと座っていた。いつの間にこの部屋に入ったんだろう?
「小次郎ちゃん、ここに来てたんだ。みんな心配して探してるよ。さっ、早くママの所に行こうよ」
と私が声をかけると、ゆうれい犬さんが、
「ごめんごめん、僕がここにいたら、お泊りしてたわんちゃんが、みんな遊びに来てくれたんだ。それで昔話をしていたらよほど面白かったのか、この子だけもっと聞きたいって帰らなくて、そのうちドアが風で閉まっちゃって」
と、済まなそうに謝った。
「じゃあー、みんなここに来たってこと?」
「そう、昨日お泊りした子は、みんな僕のことに気がついたらしく、最初は警戒してたけど、すっかり仲良しさんになっちゃって。死んだあとはどうなるの? とか、ゆうれいになってもパパとママに逢うことが出来るの? とか、質問責めにあっちゃったよ」
ゆうれう犬さんも、嬉しそうに話をしている。
そうして、パグの小次郎ちゃんは、無事にパパとママの元に戻りました。妹たちもお母ちゃんに連れられて渋々帰り、私も、
「それじゃ、またあとでね」
と、一度お部屋に戻ることにした。
それにしても、あのゆうれい犬さんは、いつからいたんだろう? 時々お客様のわんちゃんが、あのお部屋に行って独りで楽しそうに遊んでいたって話を聞いたことがあるけど、ずっと前からあのゆうれい犬さんがいたのだろうか? それとも、他のゆうれい犬さんだったのかなぁ? でも、どうして今まであのゆうれい犬さんの存在に、誰も気が付かなかったんだろう?
……不思議でしかたなかった。
そして、今日もまたお母ちゃんの「お庭へGO」の合図で始まる、運動の時間がきた。みんなの飛び出す勢いで玄関マットがめくれ、「もっと静かに走んなさぁ〜い」と、毎度ワンパターンのお母ちゃんの声。妹たちは階段を駆け下り、テニスコートを横切り、芝生の庭へ一目散。
と、そこでみんなゆうれい犬さんが気になるのか、あのお部屋の前で止まり、お庭から覗き始めた。
ところが、この時間はネコのみぁ〜くんもお散歩の時間。のっそりのっそりプールサイドを通り、トントントンと階段を下り、テニスコートでゴロンゴロンしてから、ちょうどみんなのいるお庭へとやって来た。
みぁ〜くんは、並んだ妹たちのお尻を眺めながら、「ちょっとどいて、何見てんの」と窓からあのお部屋に入っていった。
さぁ〜大変。私や妹たちはみぁ〜くんと仲良しだけど、なんとゆうれい犬さんはネコが怖いらしく、「ギャー」と叫びながら天井まで飛び上がり、頭をぶつけてパッと消えてしまった。
この一瞬の出来事に、妹たちは顔を見合わせて「ネコが、ダメだったんだねぇー」と少しガッカリしている。男らしくてカッコイイーって思っていただけに、ショックは大きいようだ。
みぁ〜くんは、自分のせいだと少しも思わず、「今、なんか飛んで天井にぶつかんなかった?」と首をひねっている。
この出来事があったせいか、ゆうれい犬さんは、約束したその日の午後1時には顔を出さず、次の日も、その次の日も現れることはなかった。
どうしちゃったんだろう? 男のくせに約束を守れないなんて……。シーズー犬とおばあちゃんを逢わせる作戦は1週間後って言ってたのに、お母ちゃんと打ち合わせしなくていいのかなぁー。
そして、とうとうその日がきてしまいました。 |
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| 次回の更新につづく! バックナンバーはこちらです。 |
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| 2004年1月は、第3木曜日に更新予定です。 |
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大川 愛子さん |
| 栃木県出身。生まれたときから大勢のわんことにゃんこに囲まれて、とびきり明るく育つ。1999年に伊豆高原に、優しい夫とわがままをなんでも聞いてくれる姑、そして家族のような動物大好きスタッフ15名と一緒に、ペット同伴専用のプチホテル・サンロードをオープン。 |
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