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妹たちとの出逢い
捨て犬といえば、今、楽しそうに遊んでいる私の妹たち4人も、3年前の12月の末、城ヶ崎海岸のゴミステーションの中に、ダンボール箱に入れられ、捨てられていたんだ。目がやっと開いてよちよち歩きの一番可愛いころなのに、お母ちゃんのおっぱいが一番欲しいときなのに、ひどいよね。
捨てた人は、なんとも思わないのかな?
生き物をゴミと一緒に捨てて、辛くないのかな?
妹たちは、ガムテープでぐるぐる巻きにされた狭い箱の中で、どんなに苦しく、どんなに寒く、どんなに悲しかったことか。
市役所のゴミを回収するお兄さんが発見したそうなんだけど(箱の中で泣き声が聞こえたそうです。危機一髪! お兄さんも驚いたそうです)、結局、安楽死を選択されて、動物病院に連れて来られたんだ。
ダンボール箱のまま動物病院に置いていかれて死を待つばかりだったけど、そこは! 私のかかりつけの優しい先生のこと、安楽死なんてとんでもない。
一生懸命、新しい飼い主さんを探していました。
その日、運良く? 神様が私の前足に怪我をさせたのです。
お父ちゃんとお母ちゃんの足を動物病院まで向けさせ、4人に逢わせたかったのでしょうか?
お父ちゃんとお母ちゃんは神様の計画どおり、怪我した私を抱えて動物病院まですっ飛んで行きました(日ごろ、鬼と言われるほど強いお母ちゃんも、私のこととなるとメソメソ、ギャアギャア、オロオロ、まるっきりダメになってしまうんです)。
案の定「先生! ポーちゃんが、ポーちゃんが大変なんです」と大騒ぎ。
待合室で待っていたお客さんも、私を抱きかかえ目も鼻もグジュグジュのお母ちゃんの様子を見て、「お先にどうぞ、すぐ診て貰った方がいいですよ」と心配してくれている(あーあ、悪いよー。爪がちょっと折れただけなのに、順番まで替わってもらって、にゃんこのママ、ごめんなさい)。
お母ちゃんの大騒ぎは、先生も受付のお姉さんもよく御存じ。いつも言う言葉は「お母さん落ち着いて、大丈夫ですから安心して座って待っててください」。
どんな小さな傷でもオロオロしてしまうお母ちゃんの扱い方は、お父ちゃんより上手かもしれない。
この先生の「大丈夫!」の一言で、手のブルブルもピタリと止まるから不思議?
私のキズは、先生のお薬チョンチョンと包帯ぐるぐる巻きですぐ終り、お母ちゃんが「あー軽い怪我で良かった。先生ありがとうございました」と帰ろうとしたとき、「クーンクーンクーン、キャンキャンキャン」と、にぎやかな合唱が、待合室の片隅に置いてあるダンボール箱の中から聞こえてきたのです。
覗いてみると、生まれて間もないヨチヨチ歩きの子犬たちだった。
ベージュの子と白い子は、元気にじゃれあって遊んでいる。
黒い子は、その下敷きになって必死にもがいていた。
茶色の一番ちっちゃい子は、ダンボール箱の隅でタオルをかじっている。
「うっわー……かわいぃ〜」
お父ちゃんもお母ちゃんも、ダンボール箱の側に座り込みニッコニッコ顔……釘付けになっている。
「どうしたんですか? この子たち」
先生は「可愛いでしょう。ちょっと抱いてみませんか?」と、これまたニッコニッコ顔。
私はあわてて「ウーワンワン、ワンワンワン、フウーンフウーンクーンクーン(あーだめだめ。抱っこしたら大変だよー)」と忠告をしたのですが間に合わず、お父ちゃんが白と黒の子犬たち、お母ちゃんが茶色とベージュの子犬たちと、2人づつを両手で抱えてしまったのです。
キズのわりには、ちょっとおおげさかな? と思うほど、包帯をぐるぐる巻きにされた私が、「ワンワン、ワンワン、クゥーンクゥーン(やめてよー、そんな子、抱っこしないでー)」と必死で訴えているのに、
「ポーちゃんいけない。この子たちが怖がっているでしょう」
なんて、冷たいお言葉。
「さっきまでの心配は、どこに行っちゃたのぉー」
(独りいじける私だった……クゥ〜ン)。
子犬たちの無邪気な姿、可哀想な生い立ち、そして先生の「雑種はなかなか貰い手がいないんですよ」と、きわめつけの一言。
お父ちゃんとお母ちゃんは、まるで金縛りにあったかのように、その場を動くことが出来なかったようです。
しばらく沈黙が続き、お父ちゃんが口を開いた。
「この子たち、うちでみんな引き取らせてください。責任を持って大切に育てますので」
先生の目をしっかり見つめた、その迷いのない言葉に「えっ」と驚いたのは、お母ちゃんだった。
「全員? この子たちみ・ん・な……」
「そりゃーそうだよ。この中から1人選べっていったって無理だろう。見てみろ。こんな幼いのに必死で生きようとしているじゃないか。これもまた何かの縁だから、頑張って俺たちで育てていこう」
と、まるで映画のような台詞を、目を輝かせて言った。
そうなんです。
この日から私は、5人姉妹の長女に一気になってしまったのです。
この後、お母ちゃんの育児ノイローゼや、ご近所とのトラブル、脱走事件や、病院いやいや事件など、数えきれない出来事がいろいろありました。
あれから3年。
4人の妹は大きな病気ひとつせず、私の10倍以上の大きさまですくすくと育ち、今ではお客様接待係として立派? に毎日の仕事をこなしてくれています。
あっ、そうだ! ついでに妹たちを紹介しておきますね。
まずは、甘え上手のチコちゃん……犬種は? と聞かれるとラブラドールに似ていてちょっと小さいので、チビラドールと呼ばれています。お客様が来ると、すぐ飛んで行って愛想をふりまきます(ただし人間だけ)。一番おとなしそうですが、怒ると一番貫禄があります(なんで1人だけ、お手とかタッチとか出来るのかなぁー)。
ごはんとしゃべるコロちゃん……しっぽと耳のところの毛がフサフサで、1人だけお嬢様って感じ。すごく美人です(私には勝てないけど)。お父ちゃん子で、いつも側にくっついています
(勝利のおたけび「ウォォー」が珍しいと言われます)。
おとぼけロクちゃん……いつも1人だけ行動が違う。耳が非常に大きく、けっして美人ではないけど、私が他のわんこにいじめられそうになると、すぐ飛んで来て助けてくれます(いつもありがとう)。それから、お母ちゃんのハーモニカ演奏で歌を唄います(……機嫌がいいときのみ)。
怖がりクロちゃん……見かけは甲斐犬のようで強そうだけど、ものすごく臆病。
だから「がいけん」と呼んでいます。ただガムとか豚の耳には執着心があって、絶対に取られません(お母ちゃんに甘えて来たとき、「ガウー」っていつもやってごめんね)。
さて、この性格いろいろの妹たちも、フェンスから不審犬が覗いているとなれば大変。
団結力を発揮し、大きなわんこに向かって「ギャンギャンギャンギャン(怪しい奴だ!!)、ワンワンワンワン(こっちに来るなぁー)」と決死の形相で騒いでいる(フェンスがないと、おとなしくなってしまうのだが)。
長女である私は「ウゥーキャンキャン、キャンキャン、ワンワンワンワンワン(もう、ウッサイなぁー、お母ちゃんに静かにしなさいって言われたばっかじゃん!!)」と、妹たちに注意をしてあげた。
なのになぜ? ドックフードを抱えて戻って来たお母ちゃんに、「ポーちゃんまでワンワンしちゃいけないでしょ」と叱られてしまった。
「なんで私が怒られなくちゃいけないの? あんたたちのせいだからね」
ちょっとむくれた私は、怒られる原因を作った侵入者に文句を言おうと近付いて行った。
と、そのとき「あっ、ポーちゃんいけない!」
お母ちゃんはあわてて私を抱き上げ、「危ないでしょ」と青い顔をして言った。
「いきなり側に行って、噛み付かれでもしたらどうすんの。この前だって危機一髪だったでしょう。あのときはお父ちゃんが助けてくれたから良かったものの……あー、今思っても、恐ろしくて鳥肌立っちゃう。ポーちゃんみたく小さい子は、大きな子に本気で噛まれたらひとたまりもないし、噛んだ子も大変なことになってしまうからね。この子もきっといい子だと思うけど、もしかしたら捨てられて人間不信やわんこ不信になっているかもしれないし、まして怪我をしたわんこは、精神的にも肉体的にも通常じゃないから、いきなりガブッなんてこともあるんだから……ポーちゃん気を付けなきゃだめだよ」
「うん、ごめんなさい。この前ハスキーちゃんに振り回されたとき、すごく怖かったもん」
「そうよー。人間だって機嫌の悪いときもあるし、わんこだってイライラすることもあるからね」
「うん。わかった。これから気を付けるようにするよ」……。
お母ちゃんが、私に大きいわんこが近付くと、警戒心を持つようになってしまったのは、あの事件があってからなのです。 |
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大川 愛子さん |
| 栃木県出身。生まれたときから大勢のわんことにゃんこに囲まれて、とびきり明るく育つ。1999年に伊豆高原に、優しい夫とわがままをなんでも聞いてくれる姑、そして家族のような動物大好きスタッフ15名と一緒に、ペット同伴専用のプチホテル・サンロードをオープン。 |
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